ああ感謝せん ―令和4年度第58回卒業証書授与式―
2023.03.03

卒業式看板

令和5年3月2日、無事卒業式を行うことができました。夜から早朝にかけてパラついた雨模様も、式が始まる頃にはすっかり晴れ渡った好日となりました。ここ2年、感染症対策のため、在校生が参列できず、基本的には歌声もない卒業式でしたが、今年度は、2年生も参列し、卒業生とともに「ああ感謝せん」の歌声がカリタスホームに戻ってきました。来年度は1年生も加えて全校生徒で卒業を祝えるといいなと思います。

今年の卒業生が加わったことで、聖カピタニオ女子高等学校の卒業生は1万人を越しました。来年度、創立60周年も迎えます。長い時間をかけて多くの方が培ってきた伝統を守っていかなければならないと気持ちを新たにしました。

以下は卒業式で述べた式辞です。

◇式辞◇

まず日に日に春の訪れが感じられる今日のこのよき日に、保護者の皆様・ご家族の皆様のご列席を賜り、卒業式を行うことができますことに心から感謝いたします。保護者の皆様、お嬢様のご卒業をお祝い申しあげますとともに、ご入学以来、本校の教育方針に深いご理解とあたたかいご協力をいただき、本当にありがとうございました。そして卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。

北山修さんという方の言葉を紹介するところから私の式辞を始めます。北山修さんは精神科医・臨床心理学者で、若い頃はフォークシンガーとしても活躍し、「あの素晴らしい愛をもう一度」という曲の作詞者としても知られている人です。

北山さんは「教師にとって生徒の前からいなくなるのも仕事のうちである」と言っています。教師の最後の仕事は生徒の前からいなくなることだ、ということです。心理学では「いなくなるから取り入れられる」という原則があるそうです。その人が本当に伝えたい大切なことは、その人がいつも目の前にいる状態ではなく、その存在がなくなり、心の中の存在となってから、徐々にそのイメージが相手の心の中に取り入れられ、内在化されるということです。私たち教職員にも、とうとうその最後の仕事をする時が来たようです。

思い起こせば三年前、皆さんの高校生活は、入学式を行なった翌日からいきなり1か月以上の休校、という始まりでした。それ以降も、カピタニオで思いっきり体験してほしかった多くの行事が、中止や縮小にせざるを得ない状況になりました。でも仕方ないでは片付けられない、皆さんにとっては一度きりしかない大切な高校生活です。予測困難な社会状況の中、皆さんの安心安全を守りつつ、何ができるのかを教職員みんなで、必死に暗中模索した三年間でもありました。「もっとこうすることができたのではないか」という反省や心残りもありますし、至らない点もたくさんあったと思います。

しかし、この三年の間にカトリック学校として教えるべきことは、皆さんにすべて教えたつもりです。自分および他者をかけがえのない大切な存在であると尊重し、その幸せを祈って過ごすこと。目に見えるものだけでなく、目に見えない背景や本質を見極め、周りに流されず自分の考えをしっかりと持つこと。自分の弱さを知り、自分が他者によって支えられていることを自覚し、感謝すること。そして自分自身も他者の支えとなるように努め、愛の実践をすること。周りの人と一緒に平和な社会を作る一粒の麦となること。そのためにこそ、学びが必要であること。そして何よりも愛の力を信じること。人として幸せに生きるために大切なことをこの学校でいろいろと学んだと思います。

とは言え、私たちはただ皆さんの心に種を蒔いたに過ぎません。皆さん自身がこれからの人生において、その種を大切に育て続けてほしいと思います。

皆さんに感謝したいことがあります。コロナ禍の中で過ごした高校生活でしたが、皆さんは誠実に学校生活を送り、地道な努力を惜しまず、できる限りのことを臨機応変に粘り強く行ない、制約が多い行事においても精一杯楽しもうとしてくれました。その姿は私たち教職員の救いにもなりましたし、励みにもなりました。後輩たちも同じ気持ちだと思います。

この三年間、制約が多いことを通してかえって、物事を深く考えたり、何かに強い感慨を抱くことも多かったのではないでしょうか。その意味では、この三年間がコロナ禍以前の当たり前のように過ごした高校生活に勝ることはあったとしても劣るとは思えません。より低く身を屈めた者がより高く飛ぶことができる。この高校生活が必ず次なる飛躍へとつながることを信じてやみません。

この先の人生においても、さまざまな困難があるでしょう。慌ただしい生活に疲れたり、壁にぶつかる時もあるでしょう。そんな時、立ち止まって高校生活で学んだことを振り返ってみてください。また何かに迷った時には学校を訪ねてください。自分の弱さを知り、自分一人だけで解決しようとせず、人の支えや助けを求める勇気を持つことも、カピタニオで学んだ大切なことの一つです。

最後に皆さんとの出会いに感謝するとともに、皆さん一人ひとりの前途に、神様の豊かなお恵みがあることを心から祈って、今日のはなむけの言葉といたします。

令和5年3月2日

聖カピタニオ女子高等学校

校長 村手元樹

布池教会

卒業式の二日前、卒業感謝ミサも無事行うことができました。