冬の寒さに負けずに咲く、地植えのパンジー(ルーチェ・ガーデン)
◇少女小説のヒロインの「賢さ」◇
今日は「『賢い』ってどういうことだろう?」というお話をしたいと思います。
女の子がさまざまな体験を通して、内面的に成長していく姿を描いた、優れた小説があります。例えば『赤毛のアン』や『小公女』、『足長おじさん』、『ハイジ』『愛の妖精』などです。このような小説から私たちは生き方を学ぶことができます。主人公にはいくつかの共通点があると思います。特に重要だと私が考える共通点が三つほどあります。その一つが「賢さ」です。
◇「賢さ」「wisdom」「sophia」◇
「賢い」にもいろいろな意味がありますが、ここで言う「賢い」とは、「思慮深い」「知恵がある」という意味です。英語で言うとwise(ワイズ)という単語に相当します。wiseの名詞形はwisdom(ウィズダム)、「知恵」とか「思慮深さ」と訳します。Wisdomは、ギリシア語ではsophia(ソフィア)という言葉に相当します。例えば上智大学の上智は優れた知恵ということで、海外では「Sophia University」という名で通っています。欧米では女の子の名前にも「Sofia」はよく使われていて、日本だと知恵子さんに当たります。賢い子になるようにとの親の願いが込められているのだと思います。
◇「賢い」とは要するに◇
さて「賢い」=「思慮深い」とは簡単に言うと考えが深い、浅くないということですが、では要するにどういうことでしょう。「考えが浅い」とは物事を一つの方向からしか見ない状態です。これが極端になると、一つの視点に偏る見方、つまり偏見となります。逆に「考えが深い」とは物事をいろいろな角度から見ることができるということだと思います。また、物事の、目に見えている部分だけでなく、目に見えない背景や本質を見極めることができるということです。
◇無知の知◇
一つ大切なことがあります。それは「自分のことを賢いと思っている人はだいたい賢くない」ということです。まだまだ自分には知らないことがたくさんある、自分は今こう考えるけど、もっと別の考え方もあるかもしれない、「私は賢くなるための努力をしている途中です」というのが、本当の「賢い」という状態だと思います。そういうことを最初に言ったのはおそらくソクラテスという哲学者です。その考え方を端的に表したのが「無知の知」という有名な言葉です。あるいは最近では「不知の自覚」とも言うようです。
私も皆さんに賢い人になってもらいたいという願いを持っています。
校長 村手元樹
*2023.1.26 全校朝礼