パリ・オリンピックに思う ―令和6年度2学期始業式―
2024.09.17

秋晴れの空

 

 

 

 

 

 

 

 

 

令和6年9月2日(月)、2学期の始業式を行いました。熱中症対策のため、オンラインで各教室に配信する形で行いました。長引いた台風10号の影響で、登校ができるかどうか前日まで心配されましたが、どうにか2学期のスタートを切ることができました。

以下、生徒の皆さんに伝えたメッセージを掲載します。

 

始業式での話

◇この夏のできごと◇

おはようございます。2学期が始まりました。健康に気をつけながら、高校生活、頑張っていきましょう。

さて、皆さん夏休みにそれぞれ個人的にいろいろな経験をして、感じたこと、学んだことも多いと思います。社会でもいろいろな出来事がありました。

たとえば自然災害、今回の台風10号。夏休みの最後の1週間、のろのろ居座り続け、遠く離れた場所にも大きな影響を与えるという、これまでの常識とは違う台風でした。少し前には宮崎で大きな地震があって、南海トラフ地震の注意喚起がありました。災害への備えの必要性を改めて感じたと思います。パリ・オリンピックも大きな話題になりました。日本人選手の活躍が連日報じられ、その技や精神力に感動しました。そんな中、華やかな舞台の陰にいろいろなことが垣間見えたオリンピックでもありました。

 

◇パリ五輪を通して考えた「戦争と平和」◇

そこでパリ・オリンピックを通して私が考えたというより、考えさせられたことを2点だけ、お話しして共有したいと思います。

1点目は、戦争と平和についての問題です。女子走り高跳びで金メダルを獲得したウクライナの選手がこんなふうに取材に答えていました。「競技だけに集中することは不可能です。私の国ではこの戦争で約500人の選手が亡くなり、彼らは(スポーツで)競争することを奪われました」オリンピックは「平和の祭典」と言われますが、開催中も今も戦争が続行しています。そしてオリンピック開催中、日本では被爆地である広島と長崎で平和を祈る式典などが開かれ、毎年、平和について考える時期とも重なり、何か複雑な気持ちになりました。

 

◇話題となった誹謗中傷問題◇

2点目は、誹謗中傷についてです。今回のオリンピックでは、選手や審判員に対するSNS上での誹謗中傷が大きな問題となりました。ちょうど出校日にスマホ安全教室もありましたが、適切な情報空間を作っていくことが社会の課題であると改めて感じました。結局これは「言葉の力」の問題でもあります。言葉は大きな力を持ち、人を生かしもするし、殺しもします。一種の暴力ともなります。

 

◇コストの不均衡◇

オリンピックでの誹謗中傷を話題にしたテレビ番組の中で、ある解説者が興味深い観点を示していたので、紹介します。それは発信側と当事者の「コストの不均衡」という考え方です。「コスト」はもともと費用という意味ですが、金銭的な費用だけなく、時間や労力、精神的な負担なども含めて使うことがあります。今回のケースで言うと、発信側は、エアコンの効いた部屋で画面を見て、ミスした選手や審判員への不満を匿名で、ワンクリックで発信するだけです。ほとんどコストがかからない。でも立ち所に公の場に拡散されて、当事者にひどいダメージ、コストを背負わせることができてしまう。誹謗中傷は「コストの不均衡」があまりに大きいということなんですね。これを聞いて原爆にも通じることだと思いました。科学技術の発展によって人間は、ボタン一つ押すだけで大量破壊、大量殺戮が出来る時代になってしまいました。

 

◇言葉に対する責任◇

言葉というのはもともといい意味でも悪い意味でも「コストの不均衡」があります。たった一言で人を励ましたり、救ったり、たった一言で人を傷つけたりします。情報空間ではそれが何倍何十倍にもなります。それだけに、その自覚と責任、慎重さ、言葉の感性がいっそう必要になると改めて感じました。

私たちは日々言葉を使って生きていますので、そんなことにも気をつけながら過ごしていきましょう。

校長 村手元樹