正門横の花壇のチューリップ
令和7年4月8日(火)、快晴。校庭には満開の桜が咲き、ヤマブキや雪柳、チューリップなど春の花々が咲き乱れています。そんな中、一昨日、新二年生英語コースの生徒も無事帰国し、全校生徒がそろって新年度を迎えることができました。
以下、新年度にあたって生徒の皆さんに伝えたメッセージをお読みください。
始業式での話
◇社会に対応できる学力を高めよう◇
おはようございます。いよいよ新しい年度が始まりました。気持ちを新たにして、どんな一年にしたいか、各自しっかりと目標を定めて高校生活を過ごしてください。
それぞれに具体的な目標がいろいろあると思いますが、共通する根本的な目標は(学校ですから)「学力を高める」ということです。広い意味での「学力」です。将来社会人として豊かに生きていくための学力のことですが、これは時代によっても変化します。そしていま大きな転換期にあります。
今後どんな学力が重要か、それを探るために認知科学という学問で注目されていることが2つあります。1つは「AI」、もう一つは「人間の赤ちゃん」です。
◇AIの学習と人間の学習の根本的違い◇
なぜ「AI」かは、すぐ分かりますね。AIの学習能力の進化は目まぐるしく、記憶力、情報処理能力などについて人間はもはや歯が立ちません。それはAIの領域と変わり、「では人間にしかできないこと」は何だろう?ということになって来ています。AIの学習と人間の学習の根本的違いは、専門用語で「記号接地」というらしいです。接地は、地面に接すると書きます。「記号接地」は大雑把に言うと、言葉が実際の意味や現実世界とつながっていることです。
例えば、私たち人間は「苺」という言葉を現実世界で実際に見て食べて経験と感覚に対応させて理解しています。生きた知識になっているんです。ところが、AIは当然のことながら、苺を見たことも食べたこともない。単語一つ一つの「意味」を本当の意味では理解していないということです。ましてや「悲しい」などの感情や「痛み」とかの身体感覚を理解しているわけではありません。こういうことから人間特有の学習のあり方が見えてきます。「人間とは何か」という問いにも通じます。
◇赤ちゃんの学習能力◇
次になぜ赤ちゃんかと言うと、赤ちゃんはスゴい学習能力を持っているからです。特に言葉を習得する能力は驚異的です。誰かから教わるわけでなく、自力で言語を習得していきます。来る日も来る日も、大人の音声や口の動きをひたすら観察し、その音声が何を対象としているかを察知し、自力で膨大な単語とその意味を理解し覚え、自分で言ってみて、練習を重ねます。そうやって喋れるようになります。
言葉だけではありません。赤ちゃん用のモビールがありますね、まだハイハイもできない赤ちゃんの足とモビールを紐で結ぶ実験があります。足を動かすとモビールも連動して動く。やがてそれに気づきます。毎日いろいろ動かし方を変えて試してみて、うまくコントロールできるようになる。でもそこで終わらず、また違う足の動かし方をして、それではうまく行かないことを確かめる。つまりよい結果だけを求めているのではなく、この世界の仕組みを知りたいと思っているのです。
◇トライアル・アンド・エラー◇
赤ちゃんの言わば探究学習です。遊んでいるように見えて、日々学んでいるんです。その学びの一番大切なポイントは、トライアル・アンド・エラー(試行錯誤)だと思うんですね。赤ちゃんはこの現実の世界に日々向き合って、果敢にトライして失敗しながら何かを発見し、自分の世界を広げていきます。
ということで、皆さんにも高校生活の中で、できるだけいろいろなことにトライしたり体験したりしてほしいと願っています。
以上、新年度の高校生活を考える際、参考になれば幸いです。
校長 村手元樹