マリア像の脇に乙女椿が咲きました。花言葉は「控えめな愛」です。
◇少女小説のヒロインの3つ目の共通点◇
先回先々回としてきた話の最終回です。『赤毛のアン』や『小公女』など、女の子の成長を描いた古典的な成長小説の主人公には特に重要な三つの共通する長所があると私は考えています。これはそれを書いた女性作家たちが自分の人生を通して学んだ生き方を読者たちに伝えようとしたメッセージです。またそういう生き方をすることで幸せな人生を歩んでほしいという願いでもあります。「賢さ」、精神的な「強さ」についてお話ししてきましたが、最後の三つ目は、「優しさ」です。「思いやりがある」という意味の「優しさ」です。形容詞で言うと「優しさ」という表現になりますが、「愛の心を豊かに持っている」と言い換えた方がはっきりするかもしれません。
◇主人公に「みなしご(孤児)」が多いのはなぜ?◇
これらの小説の主人公は「みなしご」であることが多いのですが、それはなぜでしょう。時代状況を反映しているとか諸説ありますが、私はこれらの小説のテーマが愛だからだと思います。愛の尊さを強調するため先ず愛のない状態を設定する必要があったのだと思います。親の愛を知らずに育った主人公が愛をつかんで幸せになるという展開です。
◇愛の心を育む必要条件◇
主人公が愛の心を育むには二つの必要条件があります。一つは愛されること。主人公に親以外の愛の手が差し伸べられ、愛されることによって彼女たちは人を愛することを覚えていきます。もう一つ大切な条件は、他者を愛するためには自分自身を先ず愛することが必要だということです。
◇「愛の実践」◇
宗教の授業で何十年も継続している「愛の実践」の発表があります。とても素晴らしい取り組みだと私は常々思っています。というのは、聖書に「最も大いなるものは愛」(コリント人への第一の手紙)とありますが、愛というものはもちろん目に見えないし、完全に言語化することも難しいわけです。だから具体的な実体験を通して、自分自身がうれしいと感じたことを人に行うことを繰り返しながら、徐々にイメージを深めて明確にしていくしかないもののように思います。
また、実体験するほかにも、愛をテーマにした小説を読んで、追体験することで「愛する」とはどういうことかの理解を深めることもできます。そういった小説もできるだけ沢山皆さんに読んでほしいと思っています。
以上、3回にわたってお届けしてきました話はもちろん単なる文学論ではありません。皆さんにも「賢さ」「強さ」「優しさ」を備えた人になってもらいたいというメッセージです。
校長 村手元樹
*2023.2.16 全校朝礼
*三部作の前の話も併せてお読みください。
【朝礼の話⑦】「賢い」ってどういうことだろう?|聖カピタニオ女子高等学校|校長ブログ (st-capitanio.ed.jp)
【朝礼の話⑧】「私は弱いときにこそ強いからです。」|聖カピタニオ女子高等学校|校長ブログ (st-capitanio.ed.jp)