【朝礼の話⑧】「私は弱いときにこそ強いからです。」
2023.02.14

山茶花2

垣根から空に伸びあがった山茶花

◇少女小説のヒロインの2番目の共通点◇

 先回の朝礼で『赤毛のアン』や『小公女』などの古典的な少女小説の主人公には特に学ぶべき三つの共通する長所があって、その一つ「賢さ」についてお話ししました。今日は二つ目の共通点の話をします。それは「強さ」です。もちろん体力ではなくて精神的に「強い」という意味です。主人公の女の子たちは皆、強い心を持っています。

◇「強さ」とは?◇

 精神的な強さと言ってもいろいろありますが、その中でも大切なのは「粘り強い」「根気強い」、たとえすぐに成果がでなくても継続する強さ、サステナブルな強さです。もう一つ大切なのは、失敗してもくじけずに立ち直るレジリエントな強さです。いわゆる雑草のような強さです。

◇「強い」の反対は「弱い」ではない◇

 今日私が一番言いたいことは「強い」の反対は「弱い」ではないことです。むしろ自分の弱さを認め、肯定するところから真の強さは生まれます。聖パウロは「コリント人への第二の手紙」の中で「私は自分の弱さを誇ることにします。…私は弱いときにこそ強いからです。」と言っています。この言葉には聖書的な深い意味がありますが、一般的にも言えることだと思います。先回、本当に賢い人は自分は賢くないという自覚をしている人だ(無知の知)と言いましたが、それと同様に本当に強い人は自分の弱さを自覚しているものです。

◇自分の弱さを知ること◇

 人間はもともと誰しも弱い存在です。自分一人の力では生きていくことはできないからです。今日の食事一つ取ってみても、生産者や食料を運ぶ人、調理する人がいなければ食べることはできません。お互い他の人の力を借りて助け合って生きているのです。自分の弱さを知ることは、自分が他者の力に支えられていること、それによって初めて自分が力強く立っていられることを認識することでもあります。

 日本語に「心が強い」と書いて「心強い」という言葉があります。「私、心強いです」という時、「私は心が強いです」という自慢ではありません。「あなたがいるおかげで私の心は強くなります」という具合に必ずそこに他者が想定されています。この言葉は強さの本質を表していると思います。

◇卒業生のことば◇

 こういうことはカピタニオ高校で皆さんに学んでもらいたいことでもあります。最後にある卒業生の言葉を紹介します。学校案内にも掲載されているのですが、学校に対する思いを語ってもらったインタビューの中での言葉です。

「私は今、東京で働いていますが、社会に出ると本当に多くの人と出会います。時には、お互いの考えが合わず自信を無くすこともありますが、自分と違う「他者」、そして他者と違う「自分」を素直に受け入れられるようになったのは、カピタニオで過ごした日々のおかげだと感じています。「気づき」を大切にしているこの学校で、私は自分の弱さや人のやさしさを知りました。そうした心の学びが、今の私の糧となっています。」

 今日のお話は以上です。

校長 村手元樹

*2023.2.9 全校朝礼