聖カピタニオ女子高等学校はどんな学校か?と考える時、私は「スモール・スクール、スロー・スクール」という言葉を思い浮かべます。名が体を表すように本校は「カトリック学校」「女子校」という二つの大きな特色を持っています。「スモール・スクール、スロー・スクール」という理念はこの二つの特色に端を発したものに他なりません。
スモール・スクール
「スモール・スクール」(小さな学校)。カトリック学校の多くがそうであるように創立以来、小規模な学校づくりを目指してきました。目の行き届く、少人数による家庭的な雰囲気こそ、教育の原点であり、一人ひとりを大切にし、その個性が伸ばせると考えるからです。
本校が創立された昭和38年は高度経済成長のただ中でした。大量生産・大量消費、大規模な開発が進み、「大きいことはいいことだ」が流行語となりました。このような時代に小ささのメリットを重視したことは、創立に携わったシスター方の慧眼の賜物と言えます。岡倉天心は名著『茶の本』(1906)の中で茶道の小さな世界に大きく深遠な人間性が宿っていることに触れ、「大きなものの小ささ」「小さなものの大きさ」を説きました。聖カピタニオ女子高等学校も雑踏のような環境ではなく、心安まる、静かで小じんまりした日常の中で大きく深遠な人間性を育む場所でありたいと考えているのです。
スロー・スクール
「スロー・スクール」は「スロー・フード」から連想した言葉です。スロー・フードはファースト・フード(fast food)に対して食生活を見直す運動です。促成栽培のようなやり方でなく、落ち着いた環境で生徒たちがゆっくりじっくり成長していける学校という意味で私は「スロー・スクール」という言葉を使っています。「すぐ役に立つ勉強はすぐに役に立たなくなる」と言われます。受験など目先の必要性だけに囚われず、生涯にわたって「人生の礎となる知恵と教養」を身につけることを目指します。
女子校であることも「スロー・スクール」と関連性があります。ジェンダーを意識してしまいがちな共学と違い、性別の縛りから解放され異性の目を気にせず自分と向き合える期間は貴重な経験です。またカトリック学校として本校では毎日、朝と帰りに祈りの時間があり、心落ち着けて静かに自分を振り返る時間です。宗教の授業や行事にも取り組みます。巷では昨今、都会の喧噪から離れ、休日に癒やしの時間と空間を求める、神社仏閣めぐりや坐禅体験といったツアーが好評を博しています。3年間を宗教的な雰囲気の中で過ごすことはもっと貴重な体験となり得るでしょう。
校長 村手元樹