4年ぶりのラ・カリタ ―創立60周年記念ミサ―
2023.05.18

この日に合わせたようにカピタニオ像横のヤマホウシが咲きました。                         

 

◇4年ぶりのラ・カリタ◇ 

5月12日(金)、名古屋教区の松浦悟郎司教様の司式による創立60周年記念ミサを行いました。天気にも恵まれ、5月の爽やかな一日となりました。

本校では、毎年の創立記念の日に「ラ・カリタ」(ロッシーニ作曲)という歌曲を全校生徒がイタリア語で合唱する伝統があります。ここ3年間はコロナ禍の制限のため歌うことができませんでしたが、4年ぶりにその歌声がカリタスホームに戻ってきて、感激しました。

◇誓い◇

松浦司教様の説教にも感銘を受けました。本校の『創立50周年記念誌』に掲載されている、第一回生が60年前に書いた詩を取り上げられ、その伝えるところを説明してくださいました。こんな短い詩です。タイトルは「誓い」です。

「お父さん/お母さん/私はとうとう高校生/この靴 この帽子/この姿もみてください/(一行空ける)/あの青空の如く/偽りのない/人間になることを誓います/そして 名も知れぬ雑草の如く/力強く生きる人間になることを誓います」

前半には高校生になった喜びと感謝が込められています。「偽りのない」とは、自分の心に背かないということだと司教様はおっしゃいます。でもそれは簡単なことではない。誰しも自分の気持ちと違う行動をすることがあります。例えば、お年寄りに席を譲りたいけど、周りの目が気になってできないとか、悪いことだと知りながら、ついつい、そのことをしてしまうとか。この詩にはそのような気持ちと真摯に向き合う決意があります。

◇雨ニモマケズ◇

もう一つ、司教様が注目されたのは、「人間になることを誓います」という表現です。これは宮沢賢治の「雨ニモマケズ」に通じると言われました。この詩は、賢治が「雨ニミマケズ/風ニモマケズ…」と理想とする生き方をずっと書き連ね、最後に「サウイウモノニ/ワタシハナリタイ」と締めくくる、余りにも有名な詩です。目標にもいろいろあるけれど、「こういう人間になりたい」という目標は未来への目標ではなく、今すぐにこうなるという決意でもあります。

私も今まで何気なく触れていた詩ではありましたが、司教様のお話を聞いて、改めて心が洗われるような、いい詩だなと思った次第です。60年経った今も生徒の皆さんにはこんな気持ちを持って高校生活を過ごしてほしいなと思います。

ラ・カリタも素晴らしかったのですが、ミサのあとの校歌の全校合唱も秀逸でした。最後に、私の挨拶を載せておきます。

◇校長挨拶◇

まずは保護者の皆様、本日はお忙しい中、ご参加いただき、ありがとうございます。こうして4年ぶりに保護者の方とご一緒に創立記念のお祝いできることをとても嬉しく思います。また本日は60周年ということで、シスター方やカピタニオゆかりの方にも多数お越しいただき、感謝しております。

さて生徒の皆さん、素敵な合唱と演奏、本当にありがとうございました。たぶん目頭が熱くなるだろうなと予想をしていましたが、思わず、私の目からも清らかな涙が目からこぼれ落ちました。今日の出来栄えをイタリア語で言うと、「ブラボー!」 正確に言うと女声合唱に対しては「ブラーべ」と言うらしいのですが…。

そしていまの私の気持ちを一言で言えば、「やっと聞けたね、4年間待ったよ」という気持ちです。私がカピタニオに来てから毎年聞いていたラ・カリタを最後に聞いたのは2019年、コロナ禍前です。今年卒業した3年生はカリタスでラ・カリタを一度も歌わず、卒業させてしまったのが、心残りです。一年前私はちょうどこの場所でこんなふうに挨拶しました。「コロナ禍が終息して以前のように「愛の家」という名前の「カリタスホーム」に「愛」という曲名の「ラ・カリタ」がこだまする日が来ることを祈りたいと思います。」と。その日が来たことを嬉しく思いますし、一旦途絶えてしまった歌声をこんな短期間に見事に復活させてくださった生徒の皆さんに本当に感謝します。

司式をしていただいた松浦司教様が先日お会いした時に「ラ・カリタは大好きな曲なんです。楽しみにしています」とおっしゃっていて、55周年の時のラカリタも覚えてくださっていました。私も生徒の皆さんが歌うラ・カリタが大好きなんです。ラ・カリタを聞くためにこの学校にいると言っても過言ではありません。いつもの面白くない冗談だと思っている人がいるかもしれませんが、どんなに私がラ・カリタを愛して止まないかという証拠を今日は持ってきました。本校はローベレという広報誌を出しているのですが、そのローベレの「先生からの一言」というコーナー(テーマは自由、一番書きたいことを書く)で私は30年ほど前にラ・カリタについて熱く語っています。この学校に来てまもなくのまだ若い頃です。その一節を紹介します。若気の至りで表現は拙く恥ずかしいのですが…。

「創立記念日のラ・カリタを聞きながら、ふとカリタスの外の木漏れ陽に目をやった。今年も初夏が来たか、という気持ちになった。そういえばラ・カリタはいつも若葉の中で聴いている。歌はシャボン玉のように、カリタスいっぱいに広がっては、初夏の空に吸い込まれる。」

今からみると、思いが余って言葉が付いて行ってない感があるのですが、そのくらい好きだったと思います。これからもラ・カリタずっと歌い継がれていくことを願っています。

◇創立60周年記念事業◇

最後にこの機会をお借りして創立60周年記念事業についてご紹介します。まず、教室の机・椅子を新調しました。全HR教室、選択教室、音楽室、合計668セットを新しくしました。二つ目として記念講演を10月30日(月)に瀬戸市文化センターで行うことを予定しています。社会学者の上野千鶴子先生に講演をお願いしております。上野先生は東京大学名誉教授で、日本における女性学のパイオニアとして知られ、メディアでもご活躍されています。「女の子はどう生きるか?」というテーマでご講演いただきます。保護者の方もご参加できますので、ご都合がつけば是非ご予定ください。三つ目は、ホームページのリニューアルです。わかりやすく整理した内容となっていますので、ぜひご利用ください。

本日はまことにありがとうございました。

校長 村手元樹