夏でも白い小さな花を長く咲かせるアベリア(本校舎生垣)
和名の「花衝羽根空木」は花の形が羽つきの羽根に似ているから。
令和5年9月1日(金)、2学期始業式を行いました。厳しい暑さが続いており、今年もオンラインでの始業式となりました。
始業式での話
◇出校日の西神父様の講演を振り返って◇
いよいよ2学期となりました。厳しい残暑がまだまだ続いていますが、健康に気をつけながら、高校生活、頑張っていきましょう。
さて、出校日に西神父様からとてもよいお話をお聞きすることができました。しっかりと心に記憶してこれからの生活に生かしてくれたらと思います。私なりに少し振り返ってみますので、皆さんも今一度思い起こしてください。
キーワードは全体を通して「交換」という言葉でした。ごく簡単にまとめると「世の中は、交換と交換ではないものとで成り立っている。交換の原理だけで物事を考えるのではなく、交換ではないもの(目に見えないもの)にも目を向けなさい。」というお話であったように思います。
◇交換◇
社会は基本的には「交換」で成り立っています。例えば生活に必要な物の大体のものは、現代の日本社会ではお金と交換で手にいれることができます。とてもありがたいです。何かが故障したときも業者の人が直してくれるのは、本当に助かります。お互いの専門分野を交換しあって協力して生活をしています。
◇交換を超えるもの◇
ただそれだけで社会が成り立っているわけではありません。「交換を越えるもの」もあります。例えば「愛の実践」は交換を越えるものです。電車でお年寄りに席を譲るのは交換ではないですよね。でも譲って「では(お代は)500円になります。」と言ったら交換です。レストランでおいしい料理を食べてレジでお金を払うのは交換、でもその時、店員さんに「ご馳走様でした。本当に美味しかったです。」と声を掛けるのは交換を越えるものです。
この社会に生きていると、ついつい交換の原理だけで物事を考えがちです。特にgiveとtakeをできるだけイコールにしよう、自分が与えた分だけ返ってこないとおかしい、自分が与えられる分だけしかやらない、勉強だと試験に出る事以外はビタ一文勉強しないとか、いわゆる「損得勘定」ですね。でもそういう考え方に縛られすぎない方が幸せだと思います。内田樹さんが「雪かき仕事」の例を挙げているので紹介します。
雪かき仕事をする人は朝早く起き出して、近所のみんなが知らないうちに、雪をすくって道ばたに寄せておくだけです。起き出した人々がその道を歩いているときには雪かきをした人はもう姿を消している。だから、誰がそれをしたか、みんなは知らないし、当然感謝される機会もない。でも、この人が雪かきをしておかなかったら、雪は凍り付いて、そこを歩く人の中には転んで足首をくじいた人がいたかもしれない。そういう仕事をきちんとやる人が社会の要所要所にいないと、世の中は回ってゆかない。(内田樹さんの文章から抜粋)
◇交換できないもの◇
交換できないものもあります。西神父様のお話の中にあった、結婚相手や親子の間で交わされた「(愛する理由は)おまえだからだよ」という言葉は「あなたに代わる存在はいないよ」ということですよね。このことに目を向けることの大切さを私たちに思い起こさせてくださいました。でも、私たちは既にうすうすこういうことに気づいていたのではないでしょうか。日本語には「かけがえのない」という言葉があります。まさに「交換できない」という意味です。
辞書にはこう載っています。「かけがえのない(掛け替えの無い)・・・かわりになるものがない。この上なく大切である。【現代新国語辞典より抜粋】」
「かけがえのない命」「かけがえのない時間」というように、人生で本当に大切なものは、交換ができないものだと私は思います。
さて二学期が始まります。いろいろと大変なこともありますが、西神父様が残してくださった言葉を胸に、かけがえのない高校生活を過ごしていきましょう。
校長 村手元樹