令和6年4月6日(土)、入学式を行いました。今年は桜の開花が遅く、本校でも入学式に合わせてくれたように、今日ほぼ満開になっていました。お天気もよく、久々にお花見日和の入学式となりました。以下は、入学式に私が述べた式辞を以下に載せます。新入生に向けての私のメッセージです。
入学式式辞
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。今日から高校生活が始まります。それに当たって高校生活について少し考えてみましょう。
高校生は心理学で言うと「青年期」という時期に当たります。フランスの哲学者ジャン・ジャック・ルソーは、青年期を『第二の誕生』と捉え、こう言っています。「私たちは、二回この世に生まれる。一回目は存在するために。二回目は生きるために。」青年期は、自分という存在を見つめなおし、社会とどうかかわり、その中で、より豊かにより幸せに生きるためにはどうすればいいのかという課題に対して、手探りで探し求める大切な時期です。また「自立」した大人となるための移行期間とも言えます。実際、法律も改正され、現在では高校を卒業する年がほぼ成人年齢となります。それまでに考える力、正しく判断する力を養い、自分の言動に責任を持てるようにならなければなりません。
カピタニオではリベラル・アーツという理念を重視しています。リベラルは日本語に訳すと「自由」。この自由とは「好き勝手」という意味ではなく、「自分に由る」、自分の考えによって自分らしく生きるという意味です。精神的に自立することです。文部科学省は「主体的」という言葉を好んで使っています。「好き勝手」と違うのは本当の「自由」には「責任」が伴います。自らが選択した言動には責任を持てるようになって初めて「自立」と言えるのです。そのような力をこの3年間で培ってほしいと願っています。
さて多少難しいことを言いましたが、皆さんが高校生活における、この重要な課題に向き合うためには、先ず日々の学校生活の一つひとつに真摯に取り組むことから始めてください。そこから自ずと見つかったり、身についたりするものが多くあります。その際、心がけるといい二つのキーワードがあります。
一つ目は「サステナブル(持続可能性)」。「継続は力」です。何事も先を見据(みす)えて早め早めに計画を立てて準備するよう心がけてください。準備が早いほど、心に余裕を持って継続的に物事が進められます。また自分なりのやり方で普段の勉強をする習慣をつけてください。「習慣は力」です。
二つ目のキーワードは「レジリエンス」。回復力とか粘り強さと訳します。計画や予想を立てサステナブルに実行していても、思い通りに行かないこともあります。人生に誤算は付きものです。「こんなはずじゃなかった」と失望することもしばしばです。その時、現実と向き合って、自分なりの解決策を考え、立ち上がって歩き出すのがレジリエンスという力です。高校生活の中でも戸惑うことも多いと思いますが、その未知の状況と向き合い、悩んだり迷ったりしながら試行錯誤をする分、自分が強くなって、それが将来を切り開く力にも繋がっていきます。また本当の学びの楽しさは、楽に得られる物ではなく、無我夢中で苦労した先にこそあるのではないでしょうか。漢字は同じでも、「楽(らく)なこと」と「楽しいこと」とは別物です。
興味深いことに、レジリエンスという概念はただ強いだけなく、強さの中に弱さも含んでいなければならないと言われています。頑張って頑張ってポキッと折れる強さでなく、弾力性のある、しなやかな強さということです。もちろん人に頼りすぎるのも自分の成長の妨げになりますが、自分だけで解決することが難しい時は、一人だけで悩まず、周囲の人に相談してください。自分の弱さを知り、人に助けを求め、力を借りる勇気を持つことも強さのうちです。強がることは、強さとは違います。
最後に私が尊敬する、ある小説家の「自分の羽根」というエッセイの一節を紹介します。これは正月に父親である作家が娘と羽根つきをした時の感想を述べただけのエッセイです。ちなみに羽根つきというのは羽子板という木の板で羽根のついた木の実を打ち合うというバトミントンのような正月の遊びです。筆者は、最初は下手でラリーが続かないのですが、だんだんコツをつかんでいきます。コツと言っても要するに、羽根をしっかり見て羽子板の真ん中で捉えるというだけのことです。でもそうするとコーンという小気味よい音を立てながら、まっすぐ正確に相手に飛んでいく。筆者は小説を書くコツもこれだ!と感激するという趣旨なんです。私は高校生活も同じではないかと思っています。そのエッセイの中の短い一節だけ読みます。
「(私は)自分の前へ飛んで来た羽根だけは、何とかして羽子板の真ん中で打ち返したい。ラケットでもバットでも球が真ん中に当たった時は、いちばんいい音を立てることを忘れてはならない。」
新入生の皆さん、こんなふうに高校生活を楽しんでください。ようこそ、カピタニオへ。
校長 村手元樹