◇浦上天主堂について◇
カトリック浦上教会は、旧称の「浦上天主堂」という呼び方でも親しまれている。信徒らの手によって赤煉瓦を一枚一枚積み上げ、長い年月をかけて1914年(大正3年)、浦上天主堂が完成。東洋一の大聖堂とも評された。その約30年後の1945年(昭和20年)、爆心地から500メートルの距離にあり、破壊されてしまう。その後、1954年(昭和29年)に再建された。
カトリックの巡礼の地でもあり、平和の尊さを象徴する場所でもある。まさにこの修学旅行の締めくくりの場としてはふさわしい場所である。しかもこの場所で西神父様のお話をお聞きできることは、幸甚の至りである。
私たちは最終日にこの浦上天主堂を訪れ、「みことばの祭儀」を行い、平和の祈りを捧げた。聖堂に入る前に、小聖堂に安置されている「被爆マリア像」を拝観した。倒壊した浦上天主堂の瓦礫の中から頭部だけが焼け残った形で発見された。黒く焼けた頬、空洞になった眼は原爆の恐ろしさと平和の尊さを物語っている。
◇平和は自分の心の中にある◇
以下、長崎南山中学校・高等学校の校長・西経一神父様のお話の大意である。記憶を呼び起こしながらなので、神父様の言葉通りではない部分もあるが、ご了承ください。
「私の学校の生徒の中には、コンプレックスを持っていて、「自分なんてダメだ」と思っている者もいる。でも学校生活を過ごすうちに、変わっていく。自分に誇りを持つようになる。
平和は自分の心の中にある。心の平和のためには、自分と和解し、自分を受け入れることが大切である。皆さんは自分のことを駄目な人間とか意地悪な子だとか思っているかもしれない。相手の態度をすぐ不満に思ったり、嫉妬したり、我が儘だったり、自分が嫌になったりすることもあるかもしれない。でもあなたは、そんな子ではないんです。
◇かけがえのない存在◇
どうして自分のことを、なかなか受け入れられないか。それは人と自分を「比較」するからです。自分のことを好きになってください。自分は一人しか居ない。人類の長い歴史の中で、これまでも居なかったし、これからもずっと現れない。掛け替えの無い存在である。
将来、あなたが結婚相手を見つけた時、「どうして私なの?」と聞くといい。その時、「あなたが美人だから」とか「あなたが金持ちだから」とか言う人とは結婚しない方がいい。その答えは一つ。「あなたがあなただから」。そう言ってくれる人とだけ結婚なさい。
◇いい風はさっと吹き去る◇
本当の愛に理由などいらない。「比較」したり「交換」できたりしない、かけがえのない、無償の存在とすることである。だから人に親切にした時は、さっさと姿を消したほうがいい。人のために心地よい風は、「ああ、いい風」と思った時には、もう既にいなくなって、向こうの木の葉を揺らしている。いい風はさっと吹いて、さっと吹き去る。よいことをした時もそうありたい。つい相手に見返りを求めて、相手の反応が気になり、心の平和が乱されてしまうものだが。」
昨年度もこの場所で西神父様のお話を聴き、その時、「あなたが幸せでなければ私も幸せになれない、それが平和を願う気持ちです。」とおっしゃったことが思い出される。平和は自分の心の内にある。比較(競争)や交換の原理で動く現代社会だが、自他ともに、かけがえのない存在であることも忘れずにいたいものである。
校長 村手元樹